2010年6月14日

大阪のAED不作動は改修作業時の部品損傷

2010年(平成22年)4月に大阪市で発生したAED(自動体外式除細動器)の不作動が、メーカーによる改修作業時にトランジスタの取り付け部分を損傷したことが原因とみられるとする報告書がとりまとめられました。

不作動を起こしたAEDは日本光電工業(東京都新宿区)製のTEC-2313で、大阪市消防局の救急隊が心肺停止状態の傷病者に使用し、消防署に帰署した後で報告書作成のためAEDの記録を確認したところ除細動が行われていなかったことがわかったものです。

報告書では、AED内部の高圧ユニットに使われているトランジスタが脱落していたために放電ボタンを押しても除細動が行われなかったとした上で、2007年(平成19年)に小児対応のためにバージョンアップを行った際にトランジスタの取り付け部分に力がかかって傷がつき、時間とともに劣化して脱落した可能性が高いとしました。また、脱落したのとは別のトランジスタの故障もAEDに記録されていたものの、2009年(平成21年)9月にメーカーが行った定期点検時に見落とされていたこともわかりました。メーカーでは、この故障が発見されていれば高圧ユニットの交換を行っていたとしており、結果的にAEDの不作動を防ぐことができなかったことになります。

今後の対策としては、不作動を起こしたAEDには機器の故障で除細動ができなかった場合にAED内部で放電を行い、アラーム音とモニター画面の表示で知らせる機能があったものの一刻を争う救急活動時には認識することが難しいものだったとして、明確な音声メッセージによって異常を知らせる機能の搭載を提言したほか、確実に除細動が行われたことを確認するプロトコールや、機種ごとに具体的な点検要領をつくり毎日充放電テストを行う必要があるなどとしました。

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2010年6月4日

地震時の退避行動をまとめた報告書 文部科学省作業部会

文部科学省科学技術・学術審議会の「地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会」が報告書を取りまとめました。

日本では過去に多くの大地震が発生していることから、被災経験の教訓を生かすため「地震時における心得」がまとめられてきましたが、建物の耐震性向上や緊急地震速報、ガスの自動遮断といった社会構造や生活様式の変化、新たな研究やE-ディフェンスによる実験の成果などを踏まえた検証を行い、被害を低減するための退避行動について作業部会で検討を行ってきました。

作業部会による検討では、これまでの退避行動について、丈夫な家具に身を寄せたり身を隠して頭を保護することは一定の効果があるものの、強い揺れの中で動くことがかえって危険となる場合が考えられるとしたほか、揺れを感じたときにあわてて火を消すことはやけどの危険を高める上にガスの自動遮断機器の普及などで必要性自体が乏しいと指摘しています。

報告書では、事前の地震防災対策を含めた退避行動と標語例を示しています。

備えあれば憂いなし! 事前の備えを十分に! 作ろう自分の心得を!

建物の耐震化や家具の固定、安全空間などを踏まえた事前の適切な退避行動の検討を求めています。

緊急地震速報だ! 周りに声かけ、安全な場所へ!

緊急地震速報や初期微動を認識してから主要動が到達するまでの時間に安全空間へ移動するなどの退避行動が有効であるとしたほか、主要動までの到達時間が知らされる緊急地震速報を受信できる場合には、到達までの時間に応じた退避行動の優先順位を決めておくことも必要としています。

動けなければ、姿勢を下げて、頭を守る。動けるならば、落ち着いて、身近な安全な場所へ。

震度6弱以上の非常に大きな揺れでは、無理に行動せず姿勢を低くし、余裕がある場合には安全空間へ移動することを勧め、震度5強以下の大きな揺れでは建物の耐震性の有無に応じて屋内の安全空間へ退避するか、安全な経路で屋外にでるかを判断するなどとしています。

揺れがとまれば、火消し、靴はき、ドアあける。ブレーカー落として火災を回避。

揺れが収まったあとは、火を消したり扉を開けて脱出路を確保するなど命を守るための退避行動を最優先し、可能であればブレーカーを落とすなど二次災害を防ぐ行動をとった上で屋外の安全な場所に避難するとしています。

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2010年6月2日

検定未受検の泡消火薬剤を販売、CAFS向けの3社5製品

総務省消防庁は、消防法で義務付けられた検定を受検していない泡消火薬剤が販売されていたとして販売元や都道府県、業界団体などに対応を求める通知を発出しました。

2010年(平成22年)3月、北海道根室市でヨネ(京都市)が輸入・販売した泡消火薬剤「フォレックスパンS」が低温により凝固する事案があったことから調査したところ、ヨネとモリタ(兵庫県三田市)、古河テクノマテリアル(神奈川県平塚市)の3社が、主にCAFS(圧縮空気泡放射装置)用として販売した製品が未検定だったことがわかりました。

該当の製品はフォレックスパンS(ヨネ。出荷期間2005年(平成17年)~)とミラクルフォーム(モリタ。2006年(平成18年)~)、ミラクルフォームα(モリタ。2009年(平成21年)~)、ワンセブン(モリタ。2004年(平成16年)~2009年)、フォス・チェックFWD881C(古河テクノマテリアル。2004年~2008年(平成20年))の5製品です。ミラクルフォームとミラクルフォームαは型式承認のみで個別受検を受けておらず、他の3製品は型式承認もありませんでした。

総務省消防庁では3社に対して製品の出荷自粛や原因究明、出荷済み製品の回収などを求めるとともに、全国消防機器協会と日本消防検定協会に対して確実な検定受検など法令遵守の徹底を要請しました。また、都道府県にも市場に流通している製品が検定に合格していることの確認や未受検の製品の情報提供を依頼しています。

モリタの報道発表では、CAFS専用のA火災用泡消火薬剤が個別検定の対象ではないとの認識により、未受検のまま販売してしまったとしており、全品回収して検定合格品と交換することにしています。なお、ミラクルフォームとミラクルフォームαについては社内検査を経て出荷しており、回収・交換が完了するまでの間に使用することはないとのことです。

古河テクノマテリアルは、2008年度で販売を終了したフォス・チェックのうち、品番FWD881C(寒冷地用)が未受検であることを発表しました。販売数量と販売先について調査中で、把握できしだい対応するとしています。なお、品番WD881については型式承認と個別検定を受けており問題ないとのことです。

  • (2010/06/03:モリタの報道発表について概要とリンクを追加しました)
  • (2010/06/04:古河テクノマテリアルの発表について概要とリンクを追加しました。)

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