2008年11月29日

消防科学と情報 No.93 2008年夏号

(リンクのない項目はホームページに掲載されていません)

巻頭随想 世界の災害現場で感じたこと(東京臨海病院病院長・山本保博)

山本氏は、1980年(昭和55年)から2年間にわたったカンボジア難民支援で、最初と最後の3ヶ月間現地で活動しました。カンボジア支援での初動の遅れの反省から前身が発足した国際緊急援助隊のメンバーとしても、関連派遣を含めて24~25回の出動を経験しています。

スマトラ島沖地震・インド洋津波のインドネシア・バンダアチェでの活動や、カメルーン、エチオピアで現地住民からの歓迎、感謝を受けた経験などの内容です。

特集 ウツタイン統計

ウツタイン統計について

ウツタイン(Utstein)は、ノルウェーのスタバンガー郊外にある修道院の史跡の名前です。ウツタイン様式を決定した国際会議の開催地にちなんでウツタインの名前が使われるようになりました。この様式で記録された病院外心停止の患者の統計がウツタイン統計です。

日本では、1998年(平成10年)から大阪府全域で本格的にウツタイン統計の継続記録を開始、2005年(平成17年)からは全国規模で行われています。欧米では主に蘇生や疫学の専門家に利用されているのと比較して、消防や行政、医療機関による情報の共有や集計されるデータの量など、世界的に例のない規模となっています。

ウツタイン統計データ収集の現状と課題

総務省消防庁では、救急救命士の処置範囲拡大や、市民への応急手当の普及啓発の拡大から、救急救命処置などの効果を検証、評価するため、2005年(平成17年)から全CPA症例でのウツタイン様式でのデータ収集を開始しています。

収集したデータの解析の結果、ウツタイン統計についての教育不足や、入力チェック体制の不備などから不適切なデータが多く入力されていることがわかり、改善のための検討を進めています。

ウツタイン統計データ公表の考え方と問題点ーデータの質の改善と精度管理についての提言ー

全国規模で収集が始まったウツタイン統計で、明らかになっている問題点と改善策、公表や活用について。

改善の方策として、精度向上のための教育や入力時のダブルチェック、入力要領や画面の改善、時刻合わせ、使用される用語の整理などがあげられています。

ウツタイン統計データをめぐる法的論点

ウツタイン統計と情報公開、個人情報保護との法的問題について。

地方自治体の条例で事前承認を必要としている場合に、公立病院から患者情報の提供を受ける場合や、事後検証などのためにメディカルコントロール協議会へ提供する場合などは特に注意が必要でしょうか。

札幌市におけるウツタインデータの収集と活用事例

札幌市消防局の救急体制の現状やウツタイン統計の解析結果など。

ウツタイン様式統計データの収集と活用事例

大阪市消防局のウツタイン統計から、65歳以上の高齢者を中心に分析したもの。虚血性心疾患の既往がある傷病者ではバイスタンダーの有無と心拍再開率に相関がないなど興味深いデータもあります。

ウツタイン統計活用に関する研究の現状と今後の展望

救急医学の学術誌や専門誌、ウツタイン様式に関する報告書などの文献を収集し、活用の状況について調べたもの。

関連リンク

連載第9回(最終回) 防災監のための危機管理講座

人員が限られる中で「危機管理業務」と「日常的防災業務」、「危機管理担当職員」と「防災担当職員」を分離して危機管理体制を整備する手法の提案など。

連載第5回 情報と防災

防災、国民保護の観点から、諜報機関やテロリストによる情報収集を防ぐ「カウンター・インテリジェンス」を重視する必要があるとの指摘。

地域防災実戦ノウハウ(56) ― シナリオ型被害想定(その8)―

対応シナリオの作成について。実際の災害でも活動指針として利用できるよう、被害シナリオの状況を軽減、抑制する内容を盛り込んだ対応シナリオを作成していきます。

防災歳時記(53) ―「せき止め湖」を考える ー

火災原因調査シリーズ(49)・建物火災 陶芸窯の煙突による接触過熱について

個人宅に設置された陶芸用の灯油窯で、煙突を屋根裏に近接して設置していたため、排気熱が屋根裏材に伝導加熱して火災となった事例。

センターニュース

出版物や行事の情報、編集後記。

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