建築研究所広報誌『えぴすとら』第56号に、東日本大震災で発生した火災について行った調査の概要が掲載されています。
東日本大震災では、太平洋側を中心に広い範囲で287件(総務庁消防庁調べ)の火災が発生しました。建築研究所では81件の火災について現地調査を実施しています。
発生した火災のうち166件は津波による被害のあった市町村で発生しています。これがすべて津波が原因で発生したと仮定すると、従来型の地震火災は121件となります。震度6強を観測した地域での世帯数当たりの出火率は、津波被害のなかった市町村では0.28件/1万世帯で新潟県中越地震の約1/3、阪神・淡路大震災の1/10でしたが、建物の構造的被害が比較的小さく、建物の倒壊率を阪神・淡路大震災の1/100程度とする報告もあることから、揺れによる被害が少ないにもかかわらず火災が多く発生したことになります。一方、現地調査を行った津波火災29件について市町村の世帯数から計算した出火率は12.04件/1万世帯で、強い揺れに見舞われた地域の出火率を大きく上回っています。
津波で流出した大量の石油に引火して火災が発生した気仙沼市や、流れ着いた瓦礫などから出火して校舎の3階をほぼ全焼した石巻市の小学校といった例のほか、津波による破壊を免れた建物の間に瓦礫が集積するなど、火災が発生した場合に延焼拡大の危険が高くなると考えられる状況も起きています。
従来型の地震火災は、停電中に使っていたろうそくが余震で倒れたり、停電の復旧で通電した電気製品が過熱して発生したものが多く、発災後の2日間に集中して発生しました。また、18時から24時までの間に出火した例が多くなっています。
関連リンク
- 『えぴすとら』第56号 [PDF](建築研究所)
- 東北地方太平洋沖地震関係特設ページ(建築研究所)
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