2012年7月21日

『Safety & Tomorrow』平成24年7月 第144号

巻頭言 危険物に対する安全・安心について 電気通信大学名誉教授 本間恭二

東京電力福島第一原子力発電所事故を例に挙げ、一度安全への信頼が失われてしまうと安心という主観的に捉えられるものを回復することは困難であると指摘した上で、安全を確保するためのシステムや技術の導入などにより危険物施設の安全・安心を保障するための総点検、管理体制強化が望まれるとしています。

法令解説

危険物の規制に関する政令を一部改正する政令等について 総務省消防庁危険物保安室

2012年(平成24年)5月に公布された、危険物の規制に関する政令などの改正について。

この改正では、リチウムイオン蓄電池を使った蓄電池設備を建築物の一区画や地階などに設置可能とするための技術基準整備や、セルフ方式のガソリンスタンドへの圧縮水素充てん設備併設、2012年12月1日に施行される予防規程の規定事項への津波対策追加が盛り込まれています。

最近の行政の動き

特定防災施設等及び防災資機材等に係る地震対策及び津波対策の推進について 総務省消防庁特殊災害室

2012年3月30日付けで発出された通知について。

通知では、地震と津波への対策について発生の頻度や被害の規模に応じて必要とされる対策の水準を定めているほか、対策の前提となる地震、津波の評価や被災後の応急措置実施時の留意事項についても触れています。

危険物事故関連情報

東日本大震災における仙台製油所の防災活動について

東日本大震災で被災したJX日鉱日石エネルギー仙台製油所の被害状況と対応、教訓について。

震災後、震度5弱以上の地震で自動参集としていた規程を津波警報発表時には自宅待機とするよう改定したほか、津波により非常食・非常資材や消防車両が使用不能となったことから、保管場所の変更や車両を退避させる高台を確保するなどの対策をしました。また、従業員のほとんどが自家用車で通勤しているため、自動車が被災して使えなくなったり道路状況、給油可能なガソリンスタンドが限られるなどの理由で従業員の移動手段確保が課題となりました。

三井化学株式会社岩国大竹工場製造施設火災の概要と対応状況について 総務省消防庁特殊災害室

2012年4月に山口県の石油コンビナートで発生した製造施設の火災と、事故を受けて発出された通知について。

平成23年中の危険物に係る事故の概要 総務省消防庁危険物保安室

2011年(平成23年)中に発生した危険物施設の事故について。

事故原因は腐食等劣化によるものや維持管理不十分、操作確認不十分が多く、事故件数も500件を超える高い水準で推移しています。

論文紹介 ―危険物事故防止対策論文紹介―

【消防庁長官賞】質問表評価を利用した自部署の安全文化醸成に向けた取り組み

「規制当局が事業者の安全文化・組織風土の劣化防止に係る取組を評価するガイドライン」(原子力安全・保安院、2007年)などを参考に作成したアンケートによる安全文化の評価や安全文化醸成への取り組みについて。

【消防庁長官賞】NAS 電池の課題と対策(他県で発生した火災をうけて)

2011年9月に茨城県で発生したナトリウム・硫黄電池(NAS電池)火災を受けて、NAS電池で火災が発生した場合の課題についてまとめたもの。

NAS電池にはナトリウムが使われているために対応可能な消火設備が乾燥砂などに限られることや、発生する有毒ガス(酸化ナトリウムと亜硫酸)への対応や二次災害の危険、危険物施設として定められている予防規程の内容が画一的で設置状況に即していないなどの問題点を指摘しています。

技術情報

縦置円筒型地下貯蔵タンクの安全性評価について

限られた敷地スペースへの対応などのために縦置円筒型地下貯蔵タンクの設置を求める声があるとして、従来の横置円筒型と同等以上の安全性があることを確認するための評価方法について検討しています。また、形状の違いから検査や施工、維持管理についても横置円筒型とは異なる部分があるとのことです。

大規模石油タンクで講じられている地震・津波対策と今後の課題

容量1千リットル以上の「特定屋外タンク貯蔵所」でとられている地震対策と、国土交通省関東地方整備局が2009年(平成21年)に公表した「臨海部の地震被災影響検討委員会報告書」の内容への批判。

(報告書の内容については相当頭にきているようで、「コンビナート港湾における地震・津波対策検討会議」の議事概要でも強い調子で批判している様子がうかがえます)

業務紹介

危険物施設総合研修訓練

消防訓練施設による消火訓練を含む危険物施設総合研修訓練カリキュラム構築検討の一環として試行開催した訓練の概要が掲載されています。

業務報告

平成23年度KHK審査タンクの補修概要

特定屋外貯蔵タンクの保安検査や補修後の完成検査前検査に際して行われる現場審査で収集したタンク補修の概要について。

2011年度に審査を行った特定屋外タンクでは、約96%で底部の補修が行われていたほか、定期保安検査の対象となる1万キロリットル以上の特定屋外タンク291基のうち補修の全くなかったタンクは5基(1.7%)でした。

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