2009年5月26日

救急業務高度化推進検討会の報告書取りまとめ

総務省消防庁の救急業務高度化推進検討会は、メディカルコントロール、消防機関と医療機関の連携、トリアージの3作業部会での検討結果を受けて報告書を取りまとめました。

メディカルコントロール作業部会では、メディカルコントロール協議会や救急業務の法的位置づけや、救急業務に伴う法的リスクなどについて検討を進めました。救急救命士や救急隊員が行う救命救急処置については、現在のメディカルコントロール体制でその水準が保証されている一方、搬送先医療機関の選定など、救急搬送については基準策定を求める制度がないため地域によって差がある現状を指摘し、救急搬送の基準策定が必要ではないかとしました。また、メディカルコントロール協議会に基準策定や応急処置、救急搬送の事後検証や受入医療体制を含めた問題点の検討を行う機能を持たせることを提案しています。

消防機関と医療機関の連携に関する作業部会は、都道府県が定める医療計画に基づく医療提供体制の検証、活用といった消防と医療の連携や、救急医療機関への支援のあり方などについて議論しました。検討のため、東京消防庁管内の救急事案について救急搬送と受入状況の詳細調査を行い、精神疾患や急性アルコール中毒、まったく未受診の妊婦などが選定困難になりやすい傾向があることを明らかにしたほか、処置困難の理由を設備・資器材不足、手術スタッフ不足、高次医療機関での対応、その他の4つにわけ、受入照会の件数が多い事案ほどその他の処置困難が多いと考えられるとしました。救急医療機関への財政的支援については、医師の勤務条件に見合った診療報酬や勤務手当などを検討することや、救急車の受入件数や受け入れた患者の病状などを財政措置額の算定時に考慮すべきでないかとの意見が出されました。

トリアージ作業部会では、トリアージ導入のための制度設計や救急隊の配置、編成、法的問題について検討したほか、コールトリアージプロトコルの精度向上のための実証研究を行いました。検証の結果、CPA事案の取りこぼしを防ぐため、傷病者に意識と呼吸のどちらか片方がなく40歳以上であると聴取した場合をCPAと予測することが有効であることなどがわかりました。導入時の部隊運用については、PA連携等を含めた最先着隊が10分以内、救急隊が14分以内の現場到着を目標とした場合、予備隊を含めた救急隊の再配置やポンプ隊出場による警防業務への影響の検討が必要としました。トリアージ実施に伴う法的問題について行った検討では、トリアージの実施自体は法的に問題がないと考えられるとしたうえで、アンダートリアージや判断の遅延による死亡や重症化などで法的に責任を負わなければならない可能性があると指摘しています。トリアージの実施基準についても、医学的必要性以外に、傷病者が高齢であるとか現場が山間部であるといった事情を考慮することも考えられるとした一方、他の行政組織や民間で対応することが望ましい場合もありうるとしたほか、各消防本部の実施基準の違いによる地域格差がどの程度まで許されるのかなども検討の必要があるとしました。

関連リンク

0 件のコメント: